栄養かわらばん第3号
1998年3月発行
発行:日本臨床・公衆栄養研究会
発行者:井上 一也
会長 井上正子
平成元年に誕生した当会は今年で10歳を迎えました。この10年間に会長として何が出来たのか....経過を思い返すと胸が痛みます。これまで1年経つ毎に、今年こそ会を充実させよう、きっと出来ると5月の総会でスタートを切るのですが、やった! と言えるような実感がないまま大切な1年が終わってしまう焦燥感にかられています。
勿論事業として行われている会員の知識向上のための講演会やセンスアップは、役員はじめ会員の皆様のお骨折りでつつがなく実施されてはいるのですが、もう1つ本来の目的である会員の自発的な勉強による実力アップや共同研究、共同発表などの確かな手応えのある活動を是非行いたいと願ってきました。そして、これらの成果は栄養士としての良い仕事に反映されることが必要ですので、会長として会員のための仕事の確保をしなければならないと考えていました。
幸い平成9年末からは、私が15年ほど前から顧問をしている(株)タイヘイの依頼で、調理済み宅配弁当"しあわせBox"の監修とより良いレシピの作成を行うことになりましたので、会員に仕事として紹介することができました。
この商品は、私が以前から必要を提唱してきたもので、調理が出来ない人に、栄養士が勧めることが出来る「調理済み宅配弁当」として、栄養士が主体となって「安い、おいしい、栄養的に良い」の3ポイントを押さえた商品を作り、社会に対して貢献するという私の夢の1つの実現です。
現在13名の会員の有志の方々によってよりよいレシピ作りと調理実習が行われています。今年の11月には各地の栄養士の参加も呼びかけシステムを完成させたいと、仕事を進めています。
これで1つはずみがついたようですので、会の活性化のきっかけとなってくれればよいが、と願っています。
ただし、肝心の勉強会は、今ひとつ無反応なので参加するという気力が欲しいと思います。
最後にこのかわらばんを作って下さる広報部の理事の方々に心からお礼を申し上げます。
講演会「制癌剤スクリーニングと制癌剤感受性試験の検討とその意義(その1)」
講師 田口道子
発癌研究の歴史
本日の話が栄養学を専門とされる皆様に、どれ程参考になるか分かりませんが、発癌の歴史から、私が関係した制癌の仕事を中心にお話をさせていただきます。私は佐々木研究所で、ラットの腹水肝癌を用いて制癌剤を見つける仕事をさせていただき、その後、株式会社エスアールエルに移り制癌剤感受性試験の仕事を致しました。
はじめに、実験的に癌を作る発癌の歴史から話を始めます。癌の研究には、実験動物を使ったモデル実験が必要となります。癌化学療法の分野では、治療実験をする場合に新しい薬をいきなり人間に試みるわけにはまりません。実験動物に作った癌に対しても、ある程度の成果を出す必要があります。以前は、動物に癌を作るのは大変な仕事でした。
皆様良くご存じのように、世界ではじめて癌を実験的に作ることに成功したのは、1915年(大正4年)東京大学医学部病理の山際勝三郎と市川厚一でした。ドイツの学者ウイルヒョウの癌刺激説を証明するために、ウサギの耳にコールタールを塗って発癌に成功したのです。この年は奇しくもウサギ年であったそうです。山際博士はこのときの気持ちを"
癌出来つ意気昂然と2歩3歩"とよんでおります。誠に残念なことは、せっかく癌を作りながらこの先へ研究を進めようとしなかったことです。この後の研究を大きく発展させることになったコールタールの中から、発癌性をもった物質(ジベンゾアントラセンやベンゾピレン)の分離は、英国の化学者ケナウェイのグループによって行われました。これらの物質は、煙草の煙りや公害の排気ガスに含まれており、現在、環境汚染の原因として注目されています。
佐々木研究所での発癌実験
次に、1932年(昭和7年)お茶の水にある佐々木研究所において、佐々木隆興、吉田富三は、臓器親和性のあるアゾ色素のアミノアゾトルオールを飼料にまぜてラットに食べさせ、肝臓癌を作ることに成功しました。世界ではじめて実験的に肝臓癌が出来たのです。これに続いて4年後の1936年(昭和11年)大阪大学の木下良順によって、当時バターの着色料として実際に使われていた同じアゾ色素の一つであるバターイェローを使って肝臓癌をより早く作ることに成功しています。その後、佐々木研究所において佐々木隆興と共に肝臓癌を作った吉田富三は、長崎大学へ病理学教授として赴任し、
1943年(昭和18年)
長崎大学病理学教室で、吉田肉腫の誕生へと繋がっていき、この仕事で文化勲章を受賞されました。
吉田肉腫(図3)は、癌原性物質としてアゾ色素であるオルトアミドアゾトルオールを飼料に混ぜてラットに食べさせ、その後0.5%の亜砒酸のアルコール溶液を背中の皮膚に塗る実験で出来たものです。これは結果的に後の、癌発生に関するイニシエータ-(癌原性物質)とプロモター(癌増殖物質)のニ重加算説の考え方そのものでありました。ニ重加算説に少し説明を加えますと、イニシエーション(始動)は、癌を発生させる物質(イニシエーター)が、DNAと結合して遺伝子に障害を起こし、正常の細胞を癌の初期化細胞に変えてしまいます。この段階では、まだ癌とは言えません。これに続くプロモーション(促進)は、癌を増殖させる物質(プロモーター
)が、変異を抱えたまま眠っている初期化細胞を、繰り返し刺激して増殖を促して、癌細胞にする過程を言います。この後、国立ガンセンターの杉村隆は、ニトロソグアニジンを使って胃癌の発癌実験に成功し、このようにして、現在も、日本における輝かしい発癌の歴史は引き継がれております。
佐々木研究所では、その後もラットを用いたアゾ色素による発癌実験を行い、次々と肝臓癌を作りました。その肝臓に出来た癌を細かく切り砕いて、これを別のラットの腹腔に移植したところ、腹水の中にバラバラの癌細砲が浮いている状態がみつかりました。腹水の中に浮いている状態は、先程の吉田肉腫と似ており、これは腹水の中に浮いている肝臓癌と言うことで、腹水肝癌、ドイツ語のascites
hepatomaの頭文字から別名AHと名づけられました。この様にして多くの腹水肝癌が誕生して
いきました。この腹水肝癌は、同じ発癌物質から発癌したにも拘わらず、その癌細砲は染色体の数をはじめ、抗癌剤、放射線に対する感受性等、個々に異なった値を示すことが分かりました。癌細胞は、それぞれ別の性質をもっている、すなわち、これは、癌細胞には個性があると表現されています。現在は、遺伝子の解明へと研究が進んで、遺伝子構造が癌細胞によって異なることが、より科学的に証明されてまいりました。
腹水肝癌並びに、吉田肉瞳は、吉田肉瞳の写真でおわかりのように、実験に用いる場合、正確に細胞の数を数えて移植出来ることや、一粒を取り出して性格を調べることが出来る等、実験に使いやすかったために、以後日本中の多くの研究者に使われました。
癌の化学療法研究
癌の化学療法では、抗癌剤の薬剤感受性が最大の問題となります。私共は、佐々木研究所で誕生
した多くの腹水肝癌の中から、制癌剤のスクリーニング(選別)に使えそうな11種類を選び出して感受性の検討をおこないました。抗癌剤を投与する実験の組み合わせとしては、、図4に示すように腹腔内に癌細胞を移植した後、腹腔内に抗癌剤を注射する方法、又は尾静脈から抗癌剤を注射する方法、或いは経口から投与する方法をおこないました。
次ぎには、尾静脈内に癌細胞を移植して腹腔内移植の場合と同じ投与法で実験をおこない、全部で6通りの組み合わせでスクリーニングを実施しました。移植細胞数は、腹腔内移植の場合は106個、尾静脈移植の場合は107個でおこないました。実験動物としてはドンリュラットを用い、抗癌剤の投与は癌細胞移植後3日目、72時間後から開始しました。効果判定はコントロールの生存日数との比較で延命効果で表しました。既にある薬と成績を比較して、より幅の広い感受性をもっているものを見つけたり、今までには無い、別の特徴のある新しい抗癌剤をみつけていきました。そのとき病理検査も同時におこなって、癌細砲が薬と接触したときの細胞変化を観察しました。
図5は腹腔に癌細胞を移植した後、同じ腹腔に抗癌剤を投与した成績です。横に腹水肝癌、縦には抗癌剤が並んでいます。薬の投与量はラットの最大耐量の1/10量を連続10日間腹腔内に投与して、合計で最大耐量になるシステムになっています。最大耐量とは、薬が投与される体が、その薬に耐えられる限界の量を言います。
は効果あり、は無しは中間と見ていただければ良いと思います。どの薬剤も腫瘍によって異なった感受性を示しています。臨床で広く使われている抗癌剤のMMC(MC)は、幅の広い感受性をもっていることが分かります。この表は、1/2弱が無効であり、1/2強が効果ありとなります。
図5は腹腔に癌細胞を移植後、抗癌剤を腹腔へ注射して治療したものですが、図6は尾静脈から抗癌剤を投与したものです。効果の無い部分が、多くなったのがお分りいただけると思います。このように同じ癌細胞を腹腔に移植しても、薬の投与ルートを変えただけで成績は大きく違ってまいります。このことは、例え感受性のある薬剤でも、癌細胞を殺すには、それに必要な量と癌細胞と接触するある時間が必要であることを意味しております。
つまり、体の中で薬が癌のところに、必要な量が到達しているのか、また必要な時間そこにとどまっていられるのかで、成績が大きく異なってくることを示しています。抗癌剤の組織到達性が重要な問題となってくるということです。そのため臨床で抗癌剤の働きを助ける手段として、種々の研究が行われております。DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)がそれにあたりますが、例えば、癌組織を支配する動脈に、直接動脈注射として投与を行う場合とか、薬に脂溶性をもたせて癌組機内からの流出を防ぎ、長く癌組織内に残留させる方法とかをはじめ、現在いろいろな試みが研究されております。
――次号に続く――
講演会「クックチルシステムによるフードサービス」
女子栄養養短期大学給食管理室 殿嫁婦美子
欧米では20数年前から病院給食などにクックチルシステムが導入されていますが、日本でもこの4-5年機内食、フアーストフード店、コンビニ弁当、ホテルレストランのー部などで使用されています。
クックチルシステムの種類と特徴
クックチルシステムとは、ー度加熱した料理
を細菌が繁殖しにくい温度まで急速冷却して低温保存し、提供時に再加熱するシステムである。冷却方法の違いからブラストチラー方式とタンブルチラー方式があります。
ブラストチラー方式は、通常の方法で調理したものをホテルパンや食器などにポーショ
ニング後、急速冷却機 (ブラストチラー)
に入れ、庫内の強制冷風(凍結温度の空気)により料理を急速冷却(0〜3℃)するものです。
タンブルチラー方式は、急速冷却前の調理工程が従来の方式と異なり、流動性のあるシチュー、スープ類はスチームケトルで加熱調理し、ポンプで搬送し、パック充填します。固形調理品(肉、魚、野菜など)は、バックしたものをクックタンクで低温加熱調理し、急速冷却機(タンブルチラー)により、0〜−1℃
の冷却水で急速冷却するものです。
保管では、ブラストチラー方式は0〜3℃の冷蔵庫で最大5日間、タンブルチラー方式は−1〜0℃の氷温冷蔵庫で
45日間となります。
両者には各々利点、欠点があります。ブラストチラー方式は、設備投資が安価で、作業工程も従来の方式に冷却、再加熱の工程が加わるだけで容易ですが、流動性のある料理は、冷却媒体が空気であるため冷却効率が低く、また、衛生管理および料理毎の品質管理に対する検討が必要です。
一方、タンブルチラー方式は、厨房スペース、機器などの設備投資が高価となり、大規模施設向きであり、冷却効率も高く、作業工程の衛生管理は徹底しやすいといえます。しかし、クックタンク、ケトル調理のレシピの標準化は大きな課題となりますが、確立されれば品質管理は容易であると思われます。
クックチルシステムのメリット
<<給食運営の効率化>>
-
@
計画生産.・・・厨房作業の効率化により生産性の向上
-
A
一括大量調理・・食材のコストの低減・機械化
-
B
労務コストの削減・・調理担当者の有効活用
-
C (技術者はセンターのみに配置。再加熱は素人でもよいので約1/3に削減できる)
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D
サテライトキッチンの厨房設備とスペースの縮小
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E
従業員の衛生に対する意識の向上
-
F
品質管理・・衛生安全性の確保・生産工程のマニュアル化により品質安定
品質管理
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1)衛生・安全管理
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食材料
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生産工程・・HACCPのルール
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流通工程・・T・T・T管理方式などを適用
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2)物理化学的変化
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外観・つや・てり
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冷却・再加熱による重量変化
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テクスチヤー
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色
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香り
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3)栄養素の変化
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4)味の変化
今後の課題
1)衛生・安全管理システムの構築
2)クックチルシステム対応範囲とメニュー
開発
レシピの標準化
現在一般に集団給食や病院で使われているメニューの大部分が、将来クックチルシステムで可能と考えられます。しかし、実施するためには、一次加熱でおいしく調理する、再加熱の条件を工夫するなど、各メニューごとのクックチル用レシピの開発が不可欠と考えられます。
食生活ウオッチィングの紹介
日本医療栄養センター
日本医療栄養センターにて行っている「食生活ウオッチング」について某雑誌に会長の言が掲載されましたので紹介します。
(聞き手;本誌編集長
結城 聡)
健康診断と栄養健診をペアにして受診できる時代にしていきたい。
*編集長のヘルスケア・インタビュー
管理栄養士であり医学博士でもある日本医療栄養センターの井上正子さんは、人気テレビ番組「おもいっきりテレビ」や雑誌などを通じて、食生活改善や栄養教育に積極的な取り組みを見せている。その井上さんが現在一番念願としているのが、健康診断を受診する際に、「栄養健診」も同時に受診できるようなシステムを構築することだという。すでに、ある大手企業とともに従来型の健診に栄養健診を組み込み、成果が出てきている。そこで、現在、どのような取り組み方をしているのか、その考え方と方法を語っていただいた。
8年前から継続して「食生活ウォッチング」
Q:健康診断の時に、栄養健診も実施するよう取り組まれているそうですが。まず、どういった経緯からそのようなお考えをお持ちになったのか、お聞かせください。
A:いまから10数年前に、ある企業の健保組合の方から相談があり、栄養の側面から従業員の方々の健康づくりに関わるようになったのです。その後時代とともに、従業員だけでなく、家族の面倒も見てほしいと、企業側の要望も拡がってきました。そこでどのようにしたら効率的かつ効果的な指導ができるかを考えてみたのですが、その企業では、従業員の方が広い地域に散らばって勤務していたため、通信指導の形式を取るのがいいだろう、ということになったのです。そこで「家族の食生活ウォッチング」と名付けたチェックシートを各家庭にお送りし、指導するような形が生まれたわけです。
Q:それはいつごろのことですか?
A:ちょうど八年前になります。それからずっと継続実施しており、初めの年から受診している人の場合、合計で八回受診していることになります。現在では、ほかの企業の方や個人も、この栄養健診を利用するようになっていますので、多い年には4000名程の受診者になります。
このシステムのよいところは、継続的に受診できるということです。栄養診断というのは、イベント的にー回だけ実施すればそれで終わり、というのでは意味がないわけです。それと、受診後のフォローアップとして、フリーダイヤルによる栄養相談や希望に応じての面接や調理実習も実施しています。通信指導を考えた際に、一方通行の指導だけに終始していてはならないと考えたわけです。
ベーシック項目プラス目玉テーマで実施
Q:
チェック項目は、どのような内容となっているのでしょうか。
A:ベーシックな項目に関しては、毎年同じ項目で、その改善状況を経年的に追いかけ、その結果の善し悪しを判断できるように設定しています。それに加えて、それぞれの年に1つ目玉となるテーマを組み込んだ内容としています。ですから、調査用紙、回答用紙ともに、毎回、新しく作成したものとなるわけです。同じ用紙でずっと続けていますと、指導内容も同じものになってしまいかねず、これはどうしても避けなければならないと考えたわけです。
Q:これまでどのようなテーマを設定してこられたのですか。
A:例えば、骨粗鬆症が注目を浴びた年には、ずばり骨粗鬆症をテーマにしました。そして昨年(八年度)は高脂血症、今年(九年度)は肥満というように、その時々に社会的に注目を集めているようなものを取り入れるようにしています。来年は、生活習慣病全体をテーマにしたような内容にしようかと考えているところです。
毎年、受診し続けていることによって、基本的な食べ方を復習しながら学ぶことができ、さらに毎回設定しているテーマで知識の肉付けを可能にしているわけです。つまり、「家族の食生活ウォッチング」で、正しい食事摂取能力と食事摂取技術を同時に学んでもらおう、というねらいです。
受診回数に応じて改善傾向も顕著に
Q:これまで八年間続けられてきて、受診者の食事に変化は現れていますか。
A:はい。毎回受診されている人ほど食べ方がよくなっています。こうした成果は、毎年、栄養改善学会で発表しています。実際、受診者の声をお間きしていますと、「とても役に立っている」という意見や、「毎年テーマが変わっていくので、楽しみにしている」という声など、とても良い反応が返ってきています。この声の定着は毎年時間を充分にかけ、相互理解を深めていくという栄養教育のスタンスがもたらしたものであり、これも継続指導という形をとってきた成果のーつだと思うのです。こうして実績をつみ重ねて作り上げた通信教育システムですが、効果も確認できましたので、今後は全国の栄養士の皆さんに公開し、システム使用の希望者も募り、「栄養健診」として拡げていきたいと思っています。そして将来は、北海道から沖縄まで、全国の栄養士が同じ「栄養健診」を通じて結果を考察し、また地域ごとの違いなどを比較・検討できるようになればと期待しています。それとやはり、いまでは健診が当たり前となっているように、できるだけ早い時期に栄養健診が当たり前の時代、国民の常識となるようにしていきたいですね。食生活の改善を通じて、できるだけ寝たきりの高齢者を作らないようにすることがこれからの超高齢化時代を迎えるに当たって栄養士として求められていることなのですから…。
生活通信指導食生活ウオッチングの概要
(1)システム日頃の食生活についての簡単な質問項目(アンケート方式)にお答えいただいたものをコンピューターで栄養診断をし、その結果表の作製および個別の栄養指導をするシステムです。
ご希望に応じて指導方法を選ぶことができます。
*「食生活ウオッチング」普及のため、栄養士の方々のご協力を求めます。詳細は別途ご相談致します。
体内脂肪計の基本原理と使用上の注意(その1)
株式会社タニタ
最近、体脂肪と言う言葉をよく耳にしますが、体脂肪計を正しく使いこなすための基礎知識を2回に分けてご紹介します。
体内脂肪計の基本原理と使用上の注意(その1)
両足間インピーダンス方式
タニタ体内脂肪計は、両足間インピーダンス方式を採用した体重計一体型の体内脂肪計です。測定に当たっては着衣量、体型、身長を入力してから裸足で乗って頂き、測定します。体重計一体型ですので正確な脂肪率の測定が可能です。
両足間インピーダンス方式は生体のインピーダンス(電気抵抗)を測定するBI法の一種で、両足の足裏に電極を付けて体重及び体脂肪率を測定します。測定の実際は体重計表面の足形に設定されている4つのステンレス電極に足裏を接触させる4電極法によりインピーダンス〔Ω〕を測定しています。電極部に合わせ乗ったときに若干ガニ股状態になり、不自然に感じられると思いますが、これは内股が接触することによる電流の短絡を避けるための処置です。女性の極度肥満者では、これでも内股が接触するケースがあるのでストッキングではなく、スラックス等を着用して測定することをお勧めします。
BI法の原理
身体組織の内、除脂肪組織(FFM)の73.2%は電解質を多く含む体水分(TBW)であり、電気が流れやすくなっています。一方脂肪組織は電解質をほとんど含まないため電気があまり流れない絶縁体です。身体中の電解質組織を円筒と仮定した場合の電気伝導度と体積の関係から、体水分量が計算できます。TBWがFFMの73%なので除脂肪組織FFMが逆算できます。更にこの時の体重から減算すれば脂肪量が計算でき、体脂肪率が算出できます。しかし、人体は測定原理のように理想的なモデルではないので体密度を水中体重計で測定し、統計的方法を用いて最終的な体脂肪率を計算しています。
BI法の信頼性
BI法の推定式は身長・体重・BI値で構成されています。身長・体重の測定精度は高いので、インピーダンスの測定精度によって決定されます。
なお、BI値は基準抵抗を基に測定されているので測定器自体の信頼性は非常に高いのですが、電極の種類や取り付け位置によって誤差が生じます。タニタでは両手間、手足間、両足間等、電極の取り付け位置について研究した結果、両足間B1法が最も体幹部の脂肪率を反映するという結論に達しました。
両足間BI法のメリット
B1法の誤差要因として電極の種類や取り付け方が注目されますが、一つには皮膚と電極間の接触抵抗の問題があります。接触抵抗が過大になると誤差が生ずるので、出来るだけ接触面積の広い極を使用しています。その場合、手より足の方が面積が広くなり有利といえます。
また電圧極が電流極に近いと電流極付近では電流密度が高くなるので、見かけ上の抵抗率が大きくなります。この場合、電極位置がわずかでも動くとインピーダンスが変化してしまい再現性悪くなります。電極が固定されていることと、かかとを所定位置に合わせて乗るシステムなので、電極の取り付け位置によるバラツキ誤差も小さくなっています。さらに足の裏の接触面には体重がかかるので、接触抵抗削減にも寄与し、体重も同時測定というメリットもあり、非常に簡便で再現性のある測定方法と言えます。
BI法の問題点と注意事項
現在、B1法はその簡便性、再現性、安全性などから肥満のスクリーニングとして多方面で採用されています。しかし、B1法は生体の水分から脂肪を推定する間接測定なので、インピーダンスそのものが変動する宿命的な誤差要因があります。インピーダンス変動要因を極力排除して測定するために、できるだけ一定状態で測定が行われるよう配慮する必要があります。
体脂肪計を使ってはいけない方
体脂肪計は微電流を体内に流しますので、ペースメーカー等の体内使用機器を使っている人は測定しないで下さい。
身体が脱水状態にある人は測定を避けて下さい。
利尿剤を使っている人
月経時にある女性
多量に飲酒した方
サウナから出た直後の人
激しい運動をした直後の人
より正しく測定して頂くための注意事項
体内脂肪計は基本的に素足で測定しますが、薄いストッキングを着用している場合と足裏の角質が厚い場合は4つの電極の窪んだ部分に水を数滴垂らしてから測定して下さい。
測定に当たっての注意
裾の長いズボンを履いている場合は、裾を踏んでいないか、また電極の上に正しく乗っているか確認して下さい。
お年寄りの測定は体重の値が安定するまで時間がかかる事があります。
大勢の方の測定する時は電極面を時々キレイに拭き汚れや衛生管理に気を付けて下さい。
〔木村
健太郎〕
―次回はインピーダンスの変動と、被測定者別の特徴と注意を取り上げます――
編集後記
広報部
物の有り難さ、心の豊かさは、食事のし方・姿にあらわれている様に思う。禅宗の食事は『五観の偈』に述べられている食べる事の有り難さである。食欲をコントロール出来る人は素晴らしい。人の為、陰で努力している栄養士の皆さんを知るとき頭が下がる。子供のいじめもナイフも悪いのではない。今問題なのは他人を思いやる心が足りないからと思う。
地域のイベントで心のジャンケンゲームをして試してみた。相手と同じ心の「あいこ」が一番良く負けた場合は良しとし、相手に勝つことが良くないこととした。初めのうち変なジャンケンと言っていた大人の人が理解を示し、最後には子供の方が面白がって賑やかだった。
『栄養かわらばん』もようやく三歩目、ここからと言うところ。かわらばんに対する皆さんの忌憚のないご意見、ご感想を頂きたいのですが、どうかご協力をお願い致します。
〔編集者 椿 八郎〕