栄養かわらばん第4号

1998年7月発行
発行:日本臨床・公衆栄養研究会
発行者:井上 一也

栄養士の位置づけ (会長 井上正子)


「21世紀の管理栄養士等あり方検討会」が1997年8月11日に発足し、栄養士制度の見直し作業が現在進められ、検討会の最終報告が待たれています。
従来、栄養士の位置づけに関しては「医療職種としての認知がなされていないことが問題」と言われているように下の厚生省組織令の七、九に示された通り医師〜その他保健医療関係者等は医療職として位置づけられているのに対し、治療食を担当し医療にたづさわりながら唯一栄養士だけが保健医療局地域保健・健康増進営養課で別に所管され、あくまでも予防的見地に立った業務と限定されているのをご存知でしたか?
今後の栄養士活動がチーム医療としての役割を担うことが明らかな今、医療職としての位置づけの必要性を認識しておく必要があります。

講演会「食生活教育の大切さ(精神不安を持つ現代の子供の食生活要因と改善策)」
   当会名誉会長 女子栄養大学学長 香川芳子


よい食習慣の大切さ
 最近子供の精神状態がおかしくなってきており、その原因として食生活が問題となってきている。
また、悪い食習慣が作り出す病気と言うことで、今までの成人病を生活習慣病と呼ぶようになった。
実際、女子栄養大学の栄養クリニックできちんとした食事を教育するだけで、ある程度の病気は殆ど治癒してしまう。即ち食教育は非常に大事なものである。
 現代は、多量の食品があふれており、食の知識が無いと、食べ易い安易な食品のみを食べる習慣がつきやすい。
 食教育の普及のために、数人で「食の教育審議会」を作った。これは子供の食教育のみならず成人にとっても重要なことである。
 最近家庭での食事をそのままサービスする企業がでてきている。昔は家に帰らないと食べることが出来なかったので、家庭の主婦が食事の知識を持っていればよかった。しかし今は何処ででも、何でも自由に食べることが出来る。そこで一人一人に食の知識が必要となってくる。



誰が子供の食教育をするのか?
 母親が行うのが最善ではあるが、現代の母親は非常に多忙であり、実際に子供に教えている親は減ってきている。
学校での教育も重要であり、家庭科は受験科目に無いと言うこともあり、敬遠されがちであるが、家庭科はホームプロジェクトである。生活の中から自分の問題点を拾い出し、そのテーマを先生と相談して決め、一人一人その問題について調査し報告する。このような事の出来る科目は他には無い。
 ある男子校で家庭科の授業をしたら、生徒が一生懸命になりイキイキとして勉強をしている。
親に子供の教育を望んでも、親も教育を受けておらず、教える時間も無い。結局子供を教育することで次の世代をより良くすることが早道である。

学校給食に食教育を期待
 子供の食の教育には学校給食が欠かせないものである。日本の学校給食は世界でも特に充実し進んでいる。給食を受けている小学生は99%であり、世界でも例が無い。各学校に栄養士が居て、地域性なども取り入れてそれぞれの学校にあった献立を立てる、これも日本だけである。 給食の開始当初から献立に牛乳を取り入れている。
 現在子供の食生活を見ると、朝食を食べずに学校に来る子供も居る。また、母親が出勤途中の喫茶店で子供と一緒にモーニングサービスを食べている。また子供に今日は何が食べたい?と聞く母親。子供は知っている料理のレパートリーが少ないので結局毎日同じようなものだけを食べ、一度も食べたことが無い食品が多くなる。
 学校の先生の方の問題としては、子供と一緒に給食を食べながら「こんなに食べたら太ってしまう」とか「おいしくない」とか言いながら食べる。
子供も給食を食べなくなり、残してしまう。このような先生も中にはいる。先生の給食に対する考え方、姿勢によって子供の食べ方や姿勢も変わってくる。

食品の選択に個人の本能は殆ど役立たず
 例えば,鳩に白米、玄米、胚芽米の3種類の餌を別々の容器に入れて与えると、鳩は白米だけを食べて脚気になる。人間も必要な栄養素を本能的に摂取することは出来ない。これには教育が絶対に必要である。
 この子供の教育は他の哺乳類も全てしている。
この教育は学校教育の中で行うべきである。このチャンスとしては学校給食が最もふさわしい。
学校教育は昔から"読み・書き・そろばん"と言われているが、その前に食べる事の教育が必要である。

子供の"キレル"はキャンデイバー症候群?
 キャンディバー症候群と言うものがある。これはアメリカの空軍でテスト中に墜落するパイロットが朝食抜きで、飛行機に乗る前にキャンディーバーを食べた時に多いことが分かった。
これは空腹時に糖分を摂取し高血糖になるとインシュリンの分泌が増加する。しかしこの時は食べた糖は吸収されてしまっているので低血糖を起こすことになる。これは反動性低血糖である。
最近の子供が"キレル"云々の原因もこのようなキャンディーバー症候群やビタミンB1欠乏等も考えられるのではないか。
 家族揃って食事をする事が望ましいと思うが、揃って食事をする事がかえってストレスとなることもあるようであるが、心のこもった食事をするとか、バランスの良い食事をするとか、自分で食事の大切さに気がついているとか、きちんと食べる習慣を持っているとか言う事は大切な事と 思う。

講演会「制癌剤スクリーニングと制癌剤感受性試験の検討とその意義(その2)」
   講師 田口道子


第33回講演会の要旨を前号に引き続き掲載します。
私共はラットを使って感受性の成績を出しておりますが、他の研究施設では、マウスで薬剤感受性を調べたり、兎、犬等も含めて毒性を調べたり、薬の体内動態を調べたり、新しい薬の候補が出たときには、他の施設と共同でチーム組んで研究を致します。私共では、臨床において、もし感受性のある薬剤を選択して治療をすることが可能ならば、より治療効果をあげることが出来ると考え、感受性試験の検討をおこないました。DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)がそれにあたりますが、例えば、癌組織を支配する動脈に、直接動脈注射として投与を行う場合とか、薬に脂溶性をもたせて癌組織内からの流出を防ぎ、長く癌組織内に残留させる方法とかをはじめ、現在いろいろな試みが研究されております。

ATP法について
 現在感受性試験は、細胞内の酵素活性を指標とするMTT法やATP法、細胞の増殖をアイソトープの取り込みで見る方法、または、核の形態変化を指標とする方法等数種類の検討が進められています。私共は、生きている細胞の中にあるadenosine triphosphate の測定を指標とするATP法を検討しましたので、感受性試験のーつの方法としてご報告したいと思います。
ATPを指標とする方法を選んだのは、感度が良いため少ない検体でも測定が可能であると考えたからです。これは、簡単に申しますと、生きている細胞のもっているATPの量を測定して、抗癌剤と接触させた癌細胞が薬によって、どの位のダメージを受けたかを対照と比較して、薬の効果を調べる方法です。

細胞内のATPの測定では、ATPがルシフエリンとルシフエラーゼの存在下で発光する際の放射発光量を測定する発光法を用いました。詳しいことは省略しますが、癌組織をハサミで細かく切ってから酵素でバラバラにした後、細胞数を数えて96穴プレートにまきます。その上に抗癌剤を加えて癌細胞と薬剤を接触させます。37℃で72時間培養後、細胞のATP量を測定します。
 接触させる抗癌剤の量は、人における最大血中濃度(xl)を基準に、その濃度の10倍量と、1/10量、の3濃度を設定してあります。その最大血中濃度を接触させた細胞のATP量を、コントロールと比較して50%以上の阻害率をもって有効と判定しました。
        臨床で最も使われている、MMC(1.0),5FU(10.0),ADM(0.4),CDDP(2.0μg/ml)の4薬剤を用いました。はじめに基礎的検討をおこないました。
ATPを測定するとき、一般には薬に接触した細胞を培養プレートの中で酵素処理を行って細胞を剥がして後、測定用tubeに移して ATPの抽出並びに測定を行います。しかし、私共は96穴プレートの中の細胞培養液の上に、直接過塩素酸を添加して、プレートの中でATPを抽出させてから、tubeに移して測定をおこないました。それは細胞をtubeに移すとき全ての細胞を完全に移せるかどうか疑問に思ったので、プレートの中でATPを抽出させてから測定することにしました。

これは、ヒト肺癌細胞株A549を使って細胞内ATPの過塩素酸による抽出時間を検討したものですが、20-30分で横ばいとなり、測定に入れることが分かりました。16時間まで見ましたがATP量に変化はなく測定が可能なことが分かりました。
 次に、培養をはじめて72時間後にATPを測定するわけですが、出来れば測定可能なプレートをまとめて測定したいと考え、凍結保存が出来るかを検討しました。測定後、96穴プレートを-20℃で凍結保存をおこない4日後に融解して測定した場合と比較しました。1度の凍結では、当日とほぼ同じ値を示しました。
この同じプレートを再び2日間凍結させ測定したところ、値は幾分下がりますが、平行線を保っています。このことから2度の凍結保存による測定が可能になりました。ATP法は他の方法と異なり、測定日に凍結しておけば、後日まとめて測定出来ることが分かりました。それでは、どの位の期間凍結保存が可能かを見るため、酸処理後のサンプルを−20℃で保存し、経時的にATPの測定を行いましたところ、60日まで測定出来ることが分かりました。岩手医大の外科では、この方法を採用しております。
以上は、人の癌細胞株を使った実験ですが、次は患者さんの手術材料を使って臨床検体の検討に入りました。手術材料の提供並びにMTT法の測定は慶応外科の協力の下に、共同研究で進めました。
ATP法で測定した結果が、他の方法で測定した結果と、どの位一致するかをみることにしました。
胃癌の検体10例をATP法で測定した結果と、MTT法で測定した結果を比較しました。以下次号に続く)


センスアップクッキング「ワインに含まれる機能成分(その1)」
   メルシャンワイン中央研究所 佐藤 充克


最近ワインの消費量が上昇傾向に転じている中で、赤ワインの着実な増加が注目されています。赤ワイン増加の誘因となったワインの機能性を中心にお話を頂きました。

1、適量飲酒の効果について
 米国政府が1995年6月"ワインの健康に関する研究"に200万ドルの予算を計上しました。世界中で過剰飲酒による害悪が強調されがちだが、酒のポジテイブな面に政府が投資したのは歴史始まって以来のことです。英国でも推奨飲酒量の上限を引き上げるなど、世界的に適量飲酒の効果が認められつつあり、日本でも昔から「酒は百薬の長」と言われてきたが、それが科学的データの裏付けをもって認められるようになった訳です。
 アルコールの適量摂取の効果としては、まず血小板凝集の抑制作用が挙げられます。血小板にはケガをしたときの出血を止める等重要な働きがあるが、体内で不用意に凝集すると血栓症になるため、この凝集作用を抑制すれば、血栓症の予防となります。また、適量飲酒によりLDL(低密度リポタンパク)が低下し、HDL(高密度リポタンパク)が増加することにより、血中の不要なコレステロールを除去するので、動脈硬化になりにくくなります。さらに、飲酒によるストレスの解消も大きな効果であり、ストレスに呼応して生成されるカテコールアミンの生成が減少して、ストレスから開放されることが報告されています。

2.フレンチパラドックス
 赤ワインが健康に良いという話題が沸騰したキッカケは、フランス人は喫煙率が高く、バター、肉などの動物性脂肪の摂取量がおおいのでに、心疾患による死亡率が低いという所謂"フレンチパラドックス"にあります。フランスでは、ワインは一人当たり年間63g(1日約200ml)飲まれています。(日本人の年間消費量は約1g]。これは全人口に対する消費量なので、成人はもっと大量に飲んでいます。動物性脂肪の摂取量と虚血性心疾患(CHD)による死亡率には正の相関関係があるが、フランス人やスイス人のデータは相関から大きくはずれていることが、WHOの調査結果から知られていました。フランス・リヨンのルノー博士は乳脂肪の摂取量からワインの消費量に、ある係数を掛けて差し引き、再び関係を調べたところ、極めて高い相関関係を示しています(図1)。 つまり、動物性脂肪を多量に摂取してもワインを飲んでいればCHDのリスクが少ないのです。
また、カルフォルニア大デービス校のフランケル博士は赤ワインを濃縮し、アルコールを飛ばした濃縮物をポリフェノールとし、ヒトLDLに対する抗酸化能をビタミンEと比較したところ、赤ワインのポリフェノールはビタミンEの半分の濃度でLDLの酸化を防ぎました(図2)。 すなわち、赤ワインのポリフェノールのLDLに対する抗酸化能はビタミンEの2倍高いことが判明したのです。その他にも、ワインやブドウのポリフェノールによるLDLの酸化抑制作用、血小板凝集抑制作用による血栓症リスクの減少などが報告されています。

3.活性酸素と疾病
 我々は種々の疾病の原因になるのは、"活性酸素"の影響が大きいと考え、ワインによる活性酸素の消去に関する実験を行いました。
 酸素はヒトにとって必要不可欠なものですが、未熟児網膜症の原因が過剰な酸素であることが示されているように必ずしも良いことばかりでないことが分かってきました。1969年にスーパーオキシドデイスムラーゼ(SOD)が生体内から発見され、活性酸素(スーパーオキシドアニオン、O2−)を消去することが分かってから、生体内の活性酸素ラジカルが話題となり、トルマソフらが1981年に哺乳類の最長寿命とSOD活性には高い相関があり、SOD活性を比代謝率で割った値が大きい動物ほど寿命が長いことを示し、活性酸素、フリーラジカルが大変注目されることになりました。
 フリーラジカルとは、酸素分子のように対になっていない孤立した電子を持った物質の総称で、一般に電子が対になっていないと不安定で反応性が高く、フリーラジカルにはいろいろの種類があるが、ヒドロキシラジカル(・OH)は最も反応性が高く何でも酸化してしまいます。
 体内の細胞膜には脂質が大変多く,非常に酸化され易く、脂質が酸化されると脂質アルコキシラジカル(LO・)や脂質ペルオキシラジカル(LOO・)が生成されます。これらのラジカルは連鎖反応により、互いに反応してラジカルを生成し、更に脂質の酸化、過酸化を進めます。体内の脂質が酸化されると,体が錆びるといわれるように、生体がボロボロになり、DNAを損傷したり、癌の原因ともなります。(次回は、赤ワインの活性酸素の消去能を中心に紹介します。)

 長野パラリンピック選手における栄養指導の試み
   内野 美恵


長野パラリンピック代表選手13名を対象に、競技能力の向上および効果的なコンディショニングづくりを目的とした栄養指導を行う機会を得ました。きっかけは、4年前に創刊された『アクティブジャパン』という身体障害者のスポーツを紹介する雑誌でした。当時栄養士として何かスポーツに関わる仕事ができないかと考えていた私にとって、雑誌の中で生き生きとスポーツに取り組む身障者の方々の姿は、まったく未知の世界のことの様でありながら、リハビリではなく確固たるスポーツとしての熱い情熱が感じられました。クラブ・サークル紹介のコーナで車椅子の陸上チームのマネージャー募集の記事をみつけだし「栄養士じゃダメですか?」と押し掛けてしまったのです。「そういう風に興味があるってやってくる子は結構いるんだけど大概長続きしないんだよね。もっとも栄養士さんははじめてだけど…」窓口となったチームコーチのつれないお言葉にかえって奮起させられ、とりあえず毎週日曜日の練習にお手伝いの栄養士という名目で参加させていただくことになりました。幸い私の栄養士としての活動をバックアップしていただける会社もあり、ボランティアながら仕事という意識で取り組むことができました。
 とはいえ、初めから栄養指導なんてとんでもない。車椅子の選手とは健常者が立っている場合、目線の位置がどうしても異なってしまうため、視線もろくろく合わせてもらえないような状態でした。コツコツと月日を重ねるごとに信頼のようなものが芽生え、1か月半かけてやっと栄養の話をする機会をつくっていただくことができました。栄養調査をしてみると、身障者の食事・栄養に関する意識は思いのほか低く、これは改善の余地がたっぷりあるとやりがいを感じたものでした。それから4年、選手からはじまった色々なご縁がみごとにからみ合い、長野パラリンピックのアイススレッヂスピードレースチームの専属栄養士として一年半に亘る指導をさせていただくことができました。そして、選手の大健闘のお陰で、日本身体障害者スポーツ協会より栄養士の必要性を認めるべく、身障者スポーツと栄養に関する研究依頼もいただきました。
 指導等の具体的な内容については、今年10月の栄養改善学会にて一部を発表させていただく予定です。


  体内脂肪計の基本原理と使用上の注意(その2)
   株式会社タニタ


インピーダンスの変動要因について
日間変動
通常の生活の場合、体重・脂肪率・インピーダンスの日間変動は殆ど認められませんが、脱水状態の項にあるような様々なライフスタイルの変化からくる脱水状態(体重減少)が生体のインピーダンスを変化させ、脂肪率を変動させます。
日内変動
通常、生体インピーダンスは就寝中に上昇し、活動中は低下する性質かあります。就寝中は血液に代表される細胞外液が体幹部に移行することにより、抹消部の細胞外液が減少してインピーダンスを低下させるものと考えられています。日内変動はこのサイクルに個人のライフスタイルの変化による体液分量の変化などが複合して起こります。
朝食及び昼食後は、消化吸収が終わるまでの2〜3時間は生体インピーダンスの低下傾向が認められます。夕食後は、活動量が低下するので抹消部の細胞外液減少による生体インピーダンス上昇傾向がわかります。しかしながら、消化吸収による生体インピーダンスの低下傾向と相殺される形で顕著な傾向が認められなくなります。
小児の体脂肪率測定について
小児の脂肪測定についても、BIと水中体重との測定値から新たな回帰式を求め、%FATを算出しています。対象は6歳〜17歳の健康な男女109名について測定、脂肪率及びBMIとの相関は、男女共よく示しています。特にBMIでは女子に高い相関( r=0.986)が認められます。男女差は、男子は女子に比較して体脂肪や、筋肉・骨重量などの発育に身長体重の増加以上に個人差が大きいことが示され、体格指数のみで肥満測定することの危険性が示唆されました。
アスリートの体脂肪率測定について
タニタ体重科学研究所の調査では、筋肉量の多い運動選手は非常に高い体密度を示し、体脂肪率もBIのこれまでの回帰式では1 0%程度高めに判定されることが分かりました。そこで、ここまでの体密度推定式に新たな変数(BIを身長の2乗で除した変数)を加え、重回帰分析を行い、新たな回帰式を求めて体脂肪率を測定しました。また水中体重法による体脂肪率との相関を比較検討しました。その結果、男性でr=0.908、女性でr=0.887という良好な成績を示しました。またBMIを基準に一般男女と比較したところ、BMIが同一の一般男女に対し、10〜20%体脂肪率が低いことが認められ、BMIが高くなるほどその差は大きくなりました。この様に筋肉量の多い運動選手は一般男女に比べ、明らかに体密度が高く、過体重であってもほとんど筋肉の重さであり、体脂肪も少いということが示されました。今のところ、どこからがアスリートという基準かははっきり示せませんが現役のプロ選手ととらえてください。運動種目によってはこの限りではないので注意が必要です。
妊婦の体脂肪率測定について
妊婦の脂肪率測定は一回の測定のみでは判定できません。体脂肪計による妊婦の脂肪測定において胎児への影響は何ら問題ありません。妊娠中は個人差がありますが、胎児の発育による体重増加が脂肪率の増加に働き、結果として脂肪率の増加傾向が認められます。妊婦脂肪測定で注目すべき点は一時的な測定でなく、妊娠中のインピーダンスの減少率と体重の増加率です。特に妊娠後期には、浮腫によるものと思われるインピーダンスの急激な減少を、妊娠中毒症の兆候として認めることができます。
とかくお客様はプリントの最下段の肥満度に目がいき、それだけで納得しまうケースも結構あるようです。測定結果については、体脂肪率ばかりでなく体格指数の一であるBMI以後の数値についても注目してください。
〔株式会社タニタ 木村健太郎〕


  宅配弁当作成に関する研究(第1報)
   日本医療栄養センター


栄養士が理想とする望ましい弁当の開発について
 井上正子・吉野綾美(日本医療栄養センター)

【目的】栄養指導の際に食事記録をみると外食やテイクアウト食品の多さに驚く昨今である。栄養士側としては、それらを偏りが多く栄養素の希薄な要注意食品として避けるように指導していることが多い。現状では多忙な人々に、そうした指導は今後通用しないことが予測されるが、幾段階もの調理工程を経ている加工品どうしの組み合わせをどのように良いものにするか苦慮している。この度食事としてバランスよく、健康作りに役立つ宅配弁当の作成を某企業より依頼された。栄養指導時に自分で作ることができない対象者へ紹介できる弁当を作るのは有意義であると判断し、今秋発売の予定で作業を進めているので、その内容と今後の取り組みについて報告する。

【方法・結果】慎重を期し弁当作りの完成までを以下のように三段階に進めることとした。

  • @調理を委託している直轄の弁当工場の施設・人員・調理技術からみて作れるか否か等を明らかにするため、始めは弁当工場の能力に合わせて立てられた献立の中で調理法や調味料の使い方を中心に、おいしさを改良していく作業から始めた(平成10年1月〜5月)。
  • A次いで同献立中の冷凍食品や加工食品について栄養的考察を行い、栄養所要量、食品構成との照合を行い、食品や加工品で好ましくないものは変え、一部の食品や調理法の変更、献立の見直し等も行い、ルーチン献立として42献立を完成させる(6月〜7月)。
  • B弁当工場で作ったものが試作と同じ仕上がりになり、対象者へも同じ形態で届くようになるまで作業の内容・流れを検討後、完成メニューとして発売する。

  現在約20名の栄養士が、この企画を推進しているが、今後は全国の栄養士へ自分の理想とする弁当献立のレシピ募集を行い、栄養士主体で作られた弁当として栄養士自身が納得し利用できるものを、栄養士皆参加の弁当として共に研究し合いながら、作っていきたいと考えている。


 食生活通信指導に関する研究(第3報)
   日本医療栄養センター


健康診断に栄養健診を加えることの意義と社会的必要性について
井上正子・富岡悦子・井上清彰・井上紫津子・井上一也(日本医療栄養センター)・渡辺由美(昭和大学医学部 公衆衛生学教室)

【目的・方法】健康診断は公的健康管理の基礎手段として実施されており、疾病の管理・予防に役立てられている。検査項目は年々増え、正常値も低値詳細化の傾向をたどることから、疾病者の発見には力を発揮するが、治療・予防効果には今1つ不充分さが残る。有効なものとするには、受診時の食事の仕方がどうであったのかという食生活との照合と改善指導がなされることにあると考えられる。この主旨に賛同する某企業に指導を続けているが、勤務者の住居が広域であることから通信指導としての形をとり「家族の食生活ウォッチング」と名づけた食事指導を行っている。指導後のフォローアツプとして希望者にはフリーダイヤルによる相談・来所しての面接指導、調理実習等を実施しー方通行に終始しないよう配慮している。

【結果・考察】継続8年になるが、受診回数の多い者ほど食品の摂り方がよくなっている。こうした成果は当学会で報告しているが、毎年実施しているアンケートにも感想として「とても役に立っている」「毎年健康づくりや疾病のテーマが変わっていくので楽しみにしている」などの良い反応が返っており、実際に社報にのせるために訪問インタビューを行うと@「通信教育だが、1年の間見えないところで栄養士さんとつながっているという実感があり、発想の転換ができ野菜不足が克服できている」やA「年に1度のチェックが家族それぞれの健康管理に役立っており、貴重なアドバイスなっている」等が寄せられている。この声の定着は通信継続指導の形式をとり続けた成果の1つであり、効果も確認できているので、栄養士個人では着手できないこの作業を今後は全国の栄養士の皆様に公開し、システム使用の希望者を募り「全国的栄養健珍」として拡大し対象者の状況や地域ごとの違いなどを比較検討し合えるようにし、健全な高齢化社会のー助となる運動を展開したいと考えている。


  編集後記
   広報部


総会の講演会で香川先生の「子供の食生活について」の講演が行われました。そのお話の中で、子供の「キレル」現象を栄養学的見地から説明されたのが、印象に残りました。
栄養学を健康と言う認識だけではなく、「凶悪犯罪の低年齢化」と「栄養学」と言う新しい見方、この考え方は非常に今後の栄養士の活躍するフィールドを拡大する考え方だと思います。例えば、「日本経済」と「栄養学」、「交通事故」と「栄養学」など新しいい視点で物事を考えるのは面白い、私個人としては、「栄養指導」と「コンピュータ」で新天地を開拓しようと考えておりますが…
このような考え方は、製造業の開発部門では十年以上前から非常に重要視され、1分野の専門家ではなく2・3分野に渡って専門的知識を持たないと新しい製品の開発が出来ないとされています。
栄養士のみなさんも栄養学だけではなく、今まで栄養とは無関係の他分野との組み合わせで、一休さん並みの「とんち」の利いた新しい考え方を創造してみては如何でしょう。
〔編集者 吉田武男〕

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